長野県大町市美麻にある道の駅・ぽかぽかランド美麻(みあさ)の付帯施設、ぽかぽかランド美遊(びゆう)で毎月29日に開かれているマルシェがあります。その名前は「山とお肉のピクニック」通称・にくぴくです。地域の自然資源である“森林からの恵み”を考える機会にしてほしいと、ジビエ肉とジビエ料理を普及する目的で始まりました。エリア内にあるスパイスカレーのお店「花まめや」さんが2022年4月29日にスタートし、それ以降、同地区の自治組織が主催したり2者共催で開くなどして毎月続けられています。この機会に、地域の方たちの森林資源を守る取り組みを知ってもらえたらうれしいです。
害獣としての「シカ」
ここで言うシカとはニホンジカのことです。(北アルプス一帯にはカモシカもたくさんいます)
ニホンジカによる被害は全国的に深刻です。長野県内も例外ではなく、害獣として問題視されています。大町市美麻地区では個体数が急増し、稲や苗木が食べられる事例が増えています。
マルシェが開かれている大町市美麻地区では、地域の人が「50年ほど前にはいなかった」というほどに少なかったこのニホンジカの個体数が急激に増えていて、田畑の稲や野菜、森林では植えたばかりの苗木が食べ尽くされてしまい生態系のバランスにも悪影響を及ぼしているそうです。
地域で農業をする知人に聞いたところでは「すべての稲穂の穂先だけを食べられた」という年もあるようで、とうとう電柵を施工したと話していました。さらに、林業の方は、苗木を植えても植えても食べられているという現状を教えてくれました。この状況から、森林資源を守る取り組みの大切さがよくわかります。

美麻ジビエ工房
そんな中2012年に、近隣他地区に先駆けてできたのが美麻地区内に美麻ジビエ工房です。大町市内だけでなく近隣市町村の山で駆除されたシカが持ち込まれてジビエ肉に加工され、地域の販売店などに卸されてきました。その結果、現在は近隣市町村にもジビエの加工場が増えているようです。
大町市美麻のジビエ工房で加工されたジビエは、大町市美麻の道の駅「ぽかぽかランド美麻」や、同じく道の駅内のスパイスカレーとチャイの店「花まめや」、大町市美麻中山高原にある農園カフェラビットなどで食べることができます。また、冷凍され真空パックされた食肉の販売も行っている店舗もあります。
さらに、マルシェの日には地域猟友会のジビエ試食も行っています。地域で駆除されたニホンジカの肉食べることが、森林資源を守る取り組みを進める役に立ちます。
林業の地産地消を目指す
動画の中にも出てきますが、このマルシェでは鹿肉だけでなく、木材としての森林資源も身近に感じられるワークショップが人気です。リーズナブルな値段で地元木材のカッティングボードやお皿を作ることができて、観光客だけでなく地域の若い世代が利用しています。
ワークショップ「きこりと木工」を指導してくれる地域の方は、バイオマスエネルギーとしての間伐材が地域で消費されずガソリンをかけて県外に運び出されている現状や、100円などで安い値段で簡単に手に入れられる石油製品の多さなどに課題を感じていると話してくれました。どこで育ち、だれがいつ切ったか分かる木材を使って、ストーリーのある、世界にひとつだけの“愛着あるものづくり”を楽しんでみてはいかがでしょうか?地元産の木を積極的に使うこともまた、森林資源を守る取り組みなのです。
山と人をつなぐ「おいしい循環」
この日撮った動画内では、地元猟友会の方が鹿肉をジンギスカン風の味付けにして試食を提供している様子を紹介しています。この試食は毎回あるわけでなないようですが、鹿肉料理を提供するキッチンカーもたくさん出ていました。シカ肉をペット用おやつに加工しているお店や、地域の美麻小中学校に通う中学生が考案した鹿革製品を作るワークショップなども並び、地域で活動する個性豊かで魅力的な人々と出会えるのも、このマルシェの魅力のひとつです。
害獣の適切な個体数管理は、豊かな自然環境を守るために欠かせない取り組みです。山と山の恵みを利用する仕事を守るために仕方なく駆除した命を、余すことなく活用できる仕組み作りがもっともっと進めばいいですね。
ちなみに、29日のない年の2月は9日に、そのほかお休みの並びなどの関係で28・29日の2日間開催する月もあるなど、いろいろな工夫をこらして開催しています。事前に花まめやさんのInstagramなどで確認しておくといいかもしれません。

